稜ちゃんが構え直すと3球目。
カキンッ!
バックに大きく跳ねるファウル。
すごくドキドキした。
初めて、野球って楽しいのかもって思った瞬間だった。
お父さん、お母さんたちの興奮する気持ちが、少し分かったような気がした。
試合はツーストライク、ワンボールの場面。次からは本当に本当に1球が大事な真剣勝負。
打つ、打たせない、という意地の張り合い。
ストライクゾーンならなにがなんでも当てなきゃならないし、ボール球を見極めるのも難しくなる。
頑張れ、稜ちゃん・・・・!
わたしは必死に応援していた。
声にならなくて、その応援は心の中でだけ何度も繰り返すだけ。
そんな中、ピッチャーが振りかぶって第4球。
いよいよ勝負の時!
カキーーーーンッ!
ピッチャーの剛速球を見事にバットの芯でとらえた稜ちゃんは、打ったボールの軌道を目で追う。
この試合を見ている誰もが、稜ちゃんが打ったボールの行方を追っていて。
応援の声はピタリと止み、水を打ったようにシーンとなった。


