白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
そして、ランナーのいない北星のピッチャーは大きく振りかぶる。

・・・・なんだか、ものすごい気迫。

それは、遠くから見ているわたしでもはっきりと分かるくらい、稜ちゃんにメラメラとライバル意識を燃やしていた。


大丈夫かな、稜ちゃん・・・・。

相手のピッチャーに不安を感じたわたしは、よりいっそう吹き出る冷や汗をぬぐって、力いっぱい手を握っていた。


でも、稜ちゃんは違っていた。

真剣にボールを見極めようとする中にも自信満々な表情をちょっとのぞかせて、余裕すらあるみたいだった。


稜ちゃんがバッティング体勢に入ると、すぐに相手ピッチャーが1球目を投げた。

パシッ!

ボール球を正確に判断した稜ちゃんは軽く見送り、少し足場を整えてからまた構えた。


そして・・・・第2球!

ブンッ!

パシッ!

今度はストライクゾーンに入ったボール。それは、稜ちゃんが振ったバットの少し上をかすめた。

悔しそうに顔を歪める稜ちゃん。

両者の攻防に、応援の声は前にも増して大きくなっていた。