白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
四つ葉のベンチからは、稜ちゃんを応援する大きな声が上がる。


「ボールよく見ろ〜!」

「打て〜!」

「落ち着け〜!」

「ホームラン!ホームラン!」


チームメイトがめいめいに稜ちゃんの大活躍を期待している。

わたしたち観客側からも同じような声が上がっていた。

そんな、みんなの緊張がピークになっている中、稜ちゃんだけはただ1人、冷静にバッターボックスに入って構える。


なんだろう、この気持ち・・・・。

稜ちゃんに負けてほしくない。

稜ちゃんがもう1回ホームランを打つところが見たい。

稜ちゃんが、稜ちゃんが・・・・。

稜ちゃんが一番になってほしい!


ジリジリと焼けるように暑い日だったのに、わたしは冷や汗にも似た汗をかいていた。

わたしの目にはもう、稜ちゃん以外の人は見えない。

両親たちは相変わらずワイワイと話していたけど、わたしだけこの場から切り取られたような・・・・そんな感覚。

時間が止まったようにピクリとも動けなくて、冷や汗だけがジワジワ出てくるだけだった。