「そんなのいいよっ!お母さん、使ってくれてる?」

「それがさ・・・・“もったいなくて使えない”って言って・・・・箱ごとリビングに飾ってる」


今度は、思い出し笑いをなんとかこらえながら、って感じで答える稜ちゃん。


「なんだぁ。でも、そっちのがお母さんらしいね」


わたしも、稜ちゃんのお母さんが「もったいない」って言っている場面を想像してみる。

きっと、あのティーカップのようにかわいらしくて、花が咲いたような・・・・そんな幸せな顔で笑ったんだろうな。


「それでさ、父の日も頼むよ」

「・・・・へっ? わたし?」

「ダメ・・・・か?」


思わぬ急展開に頭が回らない。

・・・・どうしよう、返事。そうだ!返事しなきゃ!

そう考えるのに、普段の何倍も時間がかかっちゃう。


稜ちゃんがまたわたしを誘ってくれた!やった!

喜びに変わるまでは、さらにもっと時間がかかった。


「ダ、ダメじゃないよ!全然!」


返事を待つ稜ちゃんに、そう言いながら大袈裟なくらいに手をパタパタさせた。