白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
「百合はもともとかわいいんだから!積極的になんないと!」

「でもわたし、胸ないし・・・・」


わたしは、悲しくなるくらい平らな胸に視線を落とした。


「・・・・胸?」


ココちゃんも、そう言いながらわたしの胸に目をやる。


「りょ・・・・キャプテンさ・・・・」

「稜ちゃんでいいよ、ここは。誰も聞いてないからさ」

「うん・・・・そうだね」


学校では、わたしはココちゃんの前でも“稜ちゃん”と言ったことがない。

それは、稜ちゃんとわたしが幼なじみだということがばれないように、ということ。

それから、誰かに聞かれたらわたしの中だけの“稜ちゃん”じゃなくなるような気がしていて・・・・。

だからずっと“長谷部君”か“キャプテン”って言ってきたんだ。

人目を気にしてきたせいで、こんなに賑やか場所でも名前で言えなくなる自分がいた。


でも、ここでなら。

久しぶりに、稜ちゃんの名前を口に出してみる。

スゥー、ハァー・・・・。
スゥー、ハァー・・・・。

とりあえずは、深呼吸。