白球と最後の夏~クローバーの約束~

 
10分間の沈黙・・・・。

その時間が、やけに重苦しくて息が詰まりそう。

バッグの取っ手を握りしめるわたしの手には、冷たい汗がにじんでいた。


稜ちゃんは今、どんな気分なんだろう。何を考えているんだろう。

いつも見ているジャージ姿の稜ちゃんの背中・・・・こんなに近くなのに、その背中がすごく遠い。




キキッ!


すると、稜ちゃんが止まった。

錆びついた自転車のブレーキの音が、静かな日曜日の昼下がりに響く。


わたしはとっさに足を止めた。

稜ちゃんは、振り向かずにボソボソと口を開いた。


「なんで見てなかったんだよ、1回裏の1点・・・・」


声のトーンはすごく低い。

けれど、怒っているのとも違うような・・・・落ち込んでいる感じがした。


「み・・・・見てたよ」


これ以上嫌われたくないから口から嘘が出る。

本当は、わたしは上田君が心配で見ていなかった。

そんなわたしの代わりに見ていたのは、岡田君。

あの試合の中で稜ちゃんはしっかり見ていたんだ・・・・。