大森君の渾身のスライダーが徐々に捕らえられはじめたのかもしれない・・・・。

少しずつだけど、バットに当たるようになってきた。

次の1球もファウルで、6球目。

高めのストレート!

お願い、振って!


ブンッ!


よしっ。これでツーアウト!


「花森、そんなに手ぇ握ると血が出るんじゃね? 心配なのは分かるけどよ、稜が負けるはずねぇんだから。リラックス!」


岡田君にそう言われて、いつの間にかきつく握っていた両手を開くわたし。

・・・・ほんと。爪の跡がくっきり付いててる。いつもこうなっちゃうんだよなぁ、わたしって。


「・・・・うん。ここまで守った1点だもんね、最後の1人までなんとかね!」

「だから、そうじゃなくて・・・・」

「ん?」

「いや、いい。試合見ようぜ」

「?・・・・う、うん」


試合に集中しているから、岡田君が何を言おうとしてるのかなんて考える余裕もない。

“なんだろう?”“どうしたんだろう?”と首をかしげることもなく、わたしは3人目のバッターに目を向けた。