“因縁の対決だ!”
そう思わせるほどのにらみ合い。
大森君はおもむろに帽子をかぶり直したし、バッターはイチローみたいにホームラン予告。
ひゃーーっ!
こんな大森君、試合じゃなきゃ見られたものじゃないよ。
いつものかわいらしい大森君じゃないんだもん。
まるで、従順な犬が狼にでもなったかのよう・・・・。
いつもなら稜ちゃんのリードに首を振らない大森君でも、このときばかりはストレートにこだわっているみたいだった。
・・・・あ、タイムだ。
稜ちゃんがタイムをとって、大森君に駆け寄る。
何かゴニョゴニョと話しているけど、わたしたちに聞こえるはずがない。
「キャプテン、何て言ってんのかな・・・・」
「さぁ。でも、おかげで落ち着いたみたいだな、大森」
「うん」
稜ちゃんが試合中にタイムをとることはあまりない。
だからこそ、たとえ何も言わなくても大森君は冷静になれたのかもしれない。
狼が土佐犬くらいになった。
本当は、わたしはチワワくらいが大森君らしくて好きだけど。


