「へえ、それが素なんだ」 「っ!」 この前もこうして嫌になってきた屋上。 本当は入っちゃいけない規則なんだけど、ドアを押したら開いたからわたしは迷わず一歩前へ踏み出して、この広い空の下で叫んでいた。 学校で唯一自分が素でいられる場所だと思う。 仮面を捨てて、笑顔を崩せる場所。 なにも気にせず、言葉を発せられる場所。 でも、それはここに誰もいないからこそ成り立つものだった。 「なに、無視?」 空耳だったら、よかったのに。