狼の愛したお姫様



「いや…なんでもない。」

「そう?…なに、叶望が気になるの?」


渡されたコーヒーを一口飲んだ瞬間、遥がそんなことを耳打ちしてきたせいでコーヒーを吹き出した。



「だ、大丈夫ですか…?」


慌てて近づこうとしてきた女は、半径2mくらいの所で止まる。


物分りはいいらしい。





「…いや、いい。来るな。」

どれだけ物分りがよくても、どれだけこいつらが気に入ってたとしても。







「俺は無理だ…」


女と普通に接するなんて、もう俺には出来やしない。





きっとこれからも────。