お墓参りを終え、すっかり真っ赤に染まった空に慌てて家へ向かっていると水瀬に会った。

「あ、常盤くん!」
俺を見つけるや否や水瀬は、みてみて、これ女の子にもらったの!と一輪の向日葵を手に微笑んだ。だけどその目は赤く腫れていて、泣いていたのか、どこかでぶつけたのか、はたまた誰かに殴られたのか、嫌な予感が脳裏を過ぎった。

「習い事でうまくいかなくて、ね…。
夏休み中にある大きなコンテストでソロパートを頂いたのに全然うまくいかなくてね…

気分切り替えよう!って椿さんの所でずっと気になってた鉢植えのお花買おうとしてたのに行ったら売り切れちゃってたし…

ついてないんだよね…」

そう言って向日葵を見て「かわいいのもらっちゃった」ともう一度微笑んだ。


「そういえば常盤くんは何してたの?」
水瀬が思い出したように尋ねる。



「俺は_____」
水瀬の家の方向へ2人横に並んで歩きながら花屋から出てきてから今までのことを簡単に説明した。
水瀬の手に握られている向日葵を指差して、もしかしたら俺が買ったものかも、なんておどけて笑ってみた。


「そっか、、
じゃあ私が買おうとしてた鉢植えは常盤くんが買ってて
常盤くんのお兄さんのために買った向日葵は今私が持ってるのね…」

「みたいだな」

その言葉が引き金に2人して小さく笑った。

あと少しで完全に沈み切ってしまう夕日が照らす2つの影は互いに寄り添いあって

まもなく消えた。