「どこ行くんだよ」
玄関に着いて聞いても、靴を履き替えながら聞いても佐野さんは「迎えが来たの。ついてきて」の一点張りで一切教えてくれなかった。
生徒玄関を出ると佐野さんは見たこともないような満面の笑みになった。
「ヨウ!」
彼女はそう言って駆け出す。
駆け出した先に立っていたのは楠木耀。
そう俺の中学時代の同級生でサッカー部の彼だ。
「久しぶりだね、駿」
そう言って笑顔を見せた耀はどこか大人びていて、その隣にいる佐野さんはいつもより幼く見えた。
まあ幼い、なんて佐野さんに言ったら殺されそうだけど。
「早く行こう?久々で楽しみなの」
いつも冷静で「女性」という言葉がぴったりなのに、いつもより1オクターブは高い声で話す佐野さんは完全に乙女だ。
そして驚いたのは2人の関係性。何も言わずに恋人繋ぎしているもんだから、うっかり大声をあげそうになった。
「「俺ら/私たち 付き合ってるよ?」」
せーの、と声をかけたわけでもないのに2人で声を揃えて言われた。
関わる人によって人って変わるもんなんだな…
密かにそう思ったのは内緒だ。



