泡沫夢幻



「奏さんは素敵な人よ。
私たちをいつも守ってくれた」
そう呟いたのは佐野さんで

「奏… 最後にもう1度、会いたかったわ…」
顔を手で覆って涙ながらに話すのは茜先生。


静かな保健室に2人のすすり泣く声が響く。


いやこの状況なんだ?!
女2人泣かせて俺やばくね?
これ誰かにに見られたら俺やばくね?!

1人で焦っていると誰かの携帯の着信音が鳴る。

それは有名なJ-popのオルゴール曲で、デフォルトの設定からかえていない俺の携帯ではない。

「あ、私だ」
佐野さんはそう言って携帯面の画面を見てニコッと笑った。その目にはすっかり涙の跡はなく、澄んだきれいな目をしていた。

「迎え来たみたい。行くわよ」
そう言って鞄を持って歩き出す。

「はぁ?」
どこ行くんだよ、そう続けようと思ったがいつの間にか佐野さんは保健室から出ていってしまっていた。後を追いかけるために急いで俺も荷物を手にして駆け出す。

保健室を出る瞬間、一瞬だけ振り返ると茜先生は「気をつけて」とにこにこしながら手を振っていた。