「とりあえずここでの内部調査は打ち切りにして明日にも出たほうがいいわ」
神崎さんは力になれなくてごめん、と言って窓を開けた。


ピュー、と草木の香りを運んだ風が入ってきた。

「ありがとう、神崎さん。
ちなみにそのレプリカはばれてない?」
マスクと手袋をつけながらそう問うと神崎さんは首を縦に振った。



「それではお掃除いたします」
ほっと胸を撫で下ろし、頭を切り替えてから私は奥さまの部屋を掃除するという執事としての職務を全うした。



神崎家での最後の夕食を終え、私は荷物をまとめ明日の朝1番にこのお屋敷を出る準備をした。


明日は長旅になりそうだ…体力が必要だな…なんて思いながら眠りについた。



夜が明け、1番に目にしたのは
執事が使う部屋のベッドの上から見える天井ではなく見なれない景色が広がる冷たい床の上。

手や足は動かなくて、おそらく枷がついているのだろう。


くそっ、やられた。
なんとかここから脱出しようと考えているうちに、
激しい睡魔に襲われてもう1度暗闇の世界へ吸い込まれていった。



もう2度と思い出したくない、過去の話。
きっとトオルの糸を引く誰かがいる。
私の勘がこんな時に当たらなければいいのだが…


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