泡沫夢幻



生徒玄関で靴を履き替え仁志を待っていると、すぐ目の前にある女子トイレから彩音が出てきた。

「彩音…?」
その声を聞いて彼女は驚いたように私を見て、
「なんか蛇口止まんなくてさ」
全身びしょ濡れの彼女はそう言っておどけて笑った。

「ん、使って」
とりあえず持っていたタオルを差し出すと
彩音はありがとうと素直に受け取って髪の毛を拭く。

髪をかきあげると首元に赤い跡があるのが見えた。
よく見ると水で濡れた制服から透けて見える腕にも、いくつか何かの跡がある。

「なんかあった?」
髪を拭き終えた彩音にそう聞くと
彩音は困ったように眉を下げて笑い、
しばらく沈黙が続く。

口を開いたのは私でも彩音でもなくて
「おまたせ〜」
スキップで駆け寄る仁志だった。