瑞穂はそう言い、布団を握り締める。咲は優しく笑った。新体操か瑞穂、どちらかを取るのなら選択は最初から決まっている。

「……新体操ができないのは確かに辛い」

咲がそう言うと、瑞穂はうつむく。きっと泣くのを堪えているのだろう。咲は瑞穂の手を取り、続けた。

「でも、瑞穂ちゃんを失うことの方がもっと辛い」

瑞穂は顔を上げ、咲を見つめる。咲は検査結果の紙をもう一度瑞穂に見せて言った。

「瑞穂ちゃんは今まで楽しいことを全部我慢して頑張ってきた。だから、もう幸せになっていいんだよ。みんなと一緒に勉強して、遊んで、部活も楽しもうよ!……だから、あたしの腎臓(一部)を受け取ってください」

しばらく沈黙が流れる。瑞穂の目からまた涙があふれた。しかし、その顔は優しい微笑みに変わっていく。

「……はい」

二人は優しく抱き締め合う。奇跡のプレゼントに咲の頰にまた涙が伝った。