「咲ちゃん、私……腎障害っていう病気になっちゃった。私の腎臓はね、治療しないと働かなくなっちゃったの」

「えっ……」

腎臓は、腰より上の背中側にあるそら豆のような形をした臓器だ。背骨を挟んで左右に一つずつある。血液中の不要な老廃物を排泄するための尿を作り、血液のphや血圧を調節する役割がある。

小学六年生の咲には、腎臓の機能などは詳しくわからない。しかし、瑞穂が重い病気になってしまったということだけはわかった。

「瑞穂ちゃん、その病気って治るの?」

「……わからない」

咲の問いに瑞穂は目をそらす。その時、自分が想像するより重い病気なのだと咲はわかり、ショックから涙があふれた。

「だ、大丈夫だよ!ちゃんと治療すれば死んじゃったりしないから!だから泣かないで?」

泣きじゃくる咲を抱き締め、瑞穂が言う。それでも咲の涙が止まることはなかった。

瑞穂は病院に定期的に通うようになり、中学校を休むことも珍しくなかった。咲は新体操部に入部したが、瑞穂は病室に通わなければならないため、部活には入れない。