あれから月日は経ち、
僕はあの頃の棗の歳になり
棗は五二歳になった。

あの頃を思い出しながら
僕は原稿用紙にペンを走らせている。

付き合ってくださいと告白した時、
棗の寿命は後一ヶ月だった。

それが、僕を好きになったことで
寿命が延びて今は一緒に暮らしている。

五十歳を過ぎてもイケメンで
老若男女問わず人気だ。

前向きな気持ちになれば
寿命が延びることもあると
僕は恋人から教えてもらった。

『夕月、ご飯できたよ』

『今行くよ』

一旦、休憩しよう。

『進んでる?』

『まぁまぁかな』

数ヶ月後、
あの日書いていた物が賞を獲《と》った。