沈黙が続く中、最初に
言葉を発したのは完甘先生だった。

『僕の秘密?』

僕は恐る恐る答えた。

『僕は人の寿命が視《み》えるんです』

田城のも南海先生のも
すれ違った人のさえも視《み》てしまう。

『秘密ってそういうこと(苦笑)

皆には内緒にしといてね(クスッ)

それから、告白の返事は
こんな僕でよければよろしくね』

一ヶ月後に完甘先生は学校にいないだろう。

………え!? 本当に!?

『付き合ってくださるんですか?』

『うん♬.*゚

名前で呼んでくれると嬉しいかな』

なっちゃん?
それとも棗とか?

いやいや、
年上の男性に対してそれないよね……

此処は無難に棗さん?

『クスクス、そんな悩まなくても』

呼び方な悩んでいると
横から笑い声が聞こえてきた。

『そうだな、
僕的には呼び捨てがいいかな(ニッコリ)

ねぇ“夕月”、呼んで?』

あざとい!! 

イケメンと呼ばれる類いの
整った顔立ちをしているから
小首を傾げる仕草も様になっているわけで
これが凡人がやるとブーイングが飛ぶ。

『わかりました、“棗”って呼びます』

✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽

付き合い始めて早二週間。

別に隠しているわけではないけど
棗と付き合っていることは
誰にも話ていなかった。

恋人になってくれたのは秘密の共有をしているからかと訊《き》いたら
それは関係ないと棗は笑って否定した。

『夕月~』

学食で田城達とお昼ご飯を食べていたら
後ろから棗に抱きつかれた。

『ぅゎっ、棗、危ないから
いきなり後ろから
抱きつかないでくださいよ』

僕の科白《せりふ》に
学食で一緒に食べていた四・五人は
ポカーンとした表情《かお》をした。

『夕月を見つけたから』

親を見つけた子供みたいだ(笑)

「何、二人は付き合ってるのか!?」

最初に復活したのは田城だった。

『そうだよ、僕の恋人と
これからも仲よくしてあげてね。

夕月、五限目が終わったら連絡してね』

田城の質問に答えたのは棗だった。

『わかった、一緒に帰ろう』

今日の夕飯は何しようかな?

帰りにスーパーに寄ってから考えればいいか。

『また、後でね』

棗がいなくなると緊張が解けたらしく
田城以外のメンバーが息を吐《は》いた。

そして、質問責めされた。

何時から好きだったのかとか
告白はどっちからしたのかとか 
主に女子の方が聞きたがった。

五限目が始まる時間になり解散した。

因みに毎朝、
同じ電車だということと“アレ”は秘密だ。