翼のない鳥



「律・・・」


沈みがちな声で僕の名前を呼んだ美鶴に、ぎこちなく笑みをつくる。


「怒ってる、よね・・・?」


綺麗な瞳に涙をため、見上げる美鶴は罪づくりなほどに可愛い。



ああ、なんて。

綺麗で、純粋で。


愛おしい、唯一の存在。



“アイツ”とはまた違う、清らかな空気を纏う彼女。

何をしてでも守り抜こうと誓った相手。



馬鹿だなあ。



「美鶴。」



そんなの、決まってるじゃないか。

君を、僕が、



「怒ったりなんて、してないよ。」


どうして怒ることができるだろう。

何をされても、僕が美鶴に寄せる感情は何も変わらない。


ましてやこんな、



「ありがとう。」



僕のためを思ってくれた行動を。



「ごめんね美鶴。」


まあ、原因は僕だ。

そもそも僕が、変にはぐらかさなければよかった話。

悪いのは、全部僕だ。

こんな面倒な体質、僕からしたら忌々しいものでしかなく。

きっと、僕と関わる人――美鶴や、生徒会――にとっては、面倒くさいものでしかないんだ。

僕だって、分かってる。

このままじゃダメなんだってこと、くらい。

でも、ダメなんだ。

どんなに頑張っても、この体質を治すことはできなかった。

一生この体と付き合っていくのなら、この気持ち悪さにも慣れなければ。


僕さえ慣れれば、僕さえ耐えれば。


そう、思っていた。

でも。

「僕が色々、はぐらかしてたから余計に心配をかけさせてしまったんだね。」


君の負担を減らせるのなら、隠すのではなく。


「話すよ、ちゃんと。」


きちんと教えた方が良かったんだ。



だって君は、弱くて美しくて、優しくて……強くて。


隠せば不安にさせてしまうだろう。

打ち明ければ、たとえ涙を流しても支えようとしてくれるだろう。






そっと、美鶴にむけて手を差し伸べた。