翼のない鳥




「律!」


沈黙が支配していた生徒会室に美鶴が飛び込んでくる。

「ああ、これでそろったねえ。じゃあ律クン、なんであんなこと言ったのか、聞かせてもらおうか。コーヒー飲んで、ごゆっくり?」

やたらとコーヒーすすめてくるな。

ちらりとコーヒーを一瞥する。

そのまま気弱野郎を見れば、不安そうな表情でこっちを見ている。


・・・これは、飲んだ方がいい、んだろうな。


「、」


マグカップの取っ手に指を絡める。

グッと力をいれて、持ち上げる。

ゆっくり口元に運んでいって。


あと20センチ、10センチ、5センチ、3センチ、1センチ・・・



口につけようとしたその瞬間、大きく腕が震え始めた。


「、」


ゆれる、ゆれる。


ああ、またか。

またなのか。



やっぱり、無理だ。

口はつけていない。

中の液体を体内に取り入れたわけではない。


でも、なのに。



「、」



ピシャリ、と。


コーヒーが、床にこぼれた。