律side

・・・妙だ。

カタカタカタ、とキーボードに指を走らせながら、頭では別のことを考える。

よくよく注意していないと気付かないほどの、小さな小さな違和感。
普段なら気にも留めないようなものだが、それらがいくつか重なっていることで、僕は頭を悩ませている。


現在の場所、生徒会室。
現在の時間、5時14分、つまり放課後。
今この場にいるメンバー、美鶴とピンク髪の元気野郎と赤髪不良を除く生徒会メンバー。

美鶴は用事があるらしく、遅れるようだ。
元気野郎はバイト、赤髪はサボり。

ふうと溜息をつき、エンターキーをタンッとおす。

「・・・何か用?さっきから視線が不愉快だ。」

背後から、さりげなくさりげなく観察するように向けられる視線が神経を刺激する。

クルリと椅子を回して睨みつけると、気弱野郎がビクリと肩を震わせた。


「あ、あああああの、これ、どうぞ・・・!」


そう言って差し出されたのは、コーヒーだった。


「・・・、」


受け取って香りを確かめる。


この、香りは。


・・・生徒会って、予算余ってんのか?


ああでも、ようやく腑に落ちた。



そういう、ことか。


頭に浮かんだのは、眉尻を下げて心配そうに僕を見る、美鶴の姿だった。