「まあ、そういうわけで!」
キリリと顔を引き締めた美鶴が話をまとめる。
いつもは真秀に似て少々馬鹿っぽいところがあるが、弟の話になると途端に顔つきが変わるな・・・
兄弟って、こんなに仲がいいものなのか?
生憎俺は一人っ子だからよく分からないが。
・・・このふたりが特殊なんだろうな。
「私、このままじゃ律はいつかダメになると思う。・・・だから、みんなに協力してほしいの。」
笑ってはいるが、目はいたって真剣。
こういうタイプは、厄介だな。
「それがお前の目的か。」
溜息まじりに確認をとると、無言の笑みが返ってきた。
否定はしない、と。
「・・・は?どういうことだよ。」
真秀は混乱、他の奴等はだいたい納得、というところか。
「コイツは普段お前に似て馬鹿っぽいが、正真正銘の馬鹿ではない、ということだ。」
「あ!?喧嘩売ってんのかテメェ!」
「ああ真秀、その拳ひっこめて!柊羽も挑発しない!」
「事実を述べたまでだ。」
「ちょ、私もけなされてるよね!?」
馬鹿に馬鹿と言って何が悪い。
そう目で問うと、司が溜息をついた。
・・・老けるぞ。
「とりあえず、柊羽が言ってるのはな?美鶴が生徒会に入ろうとしているのは律のためだ、ってことだよ。確かに俺たちはお互いにそれなりに興味をもっているし、これから仲良くしていきたいなとは思ってる。けど、美鶴はその感情だけに引きずられるようなヤツじゃないってこと。・・・ひょっとして、それが目的で俺らに近づいた?」
真秀はポカンと口を開けている。
阿保面。
「ま、平たく言えば、そういうこと。あ、でも誤解しないでね?確かに最初にみんなに近づいたのはそういう目的があったからだけど、私がここにいたいと思ったのはそれだけじゃない。それなりにみんなのこと、好きだから。」
えへへ、といたずらがばれた子供のような顔をしているが、俺たちは苦笑を禁じ得ない。
まあ、それで幻滅などしないが。
人間、少しは打算や目的が見えているほうが逆に安心する。
それに、美鶴が悪い人間ではないと俺たちは思っているからな。
本当に怖いのは、
「へー、やっぱ食えないねえ、美鶴チャン。」
「えー、茜君こそ、よく分かんないよね。」
こういう、ふらふらしてつかみどころのない、何を考えているか分からないヤツ。
「ま、なんにせよ、こちらの意向は変わらないよ。俺たちは君たち2人の存在を歓迎するし、これから先もメンバーとして一緒にいてもらいたい。その中で、君たち2人とのコミュニケーションをはかるのは必須だと思っている。」
それはつまり、美鶴の申し出を受けるということ。
リーダーの言葉に、俺らは頷いて応えて見せた。
それに美鶴はふわりと笑って、
「交渉成立、ですね。」
手を差し出した。