「律なら、本当は人と関わらない生き方だって選べた。」
美鶴の声が再び緊張をおび、本題、というか、俺たちに伝えたいことを言おうとしていることが分かった。
「律には学歴なんて必要ない。実際、今も色々と稼いでる。律の収入だけで私たちは十分に生活できているし、むしろ貯金する余裕があるくらい。だから、律はその気になれば一生家にひきこもってることだってできる。」
・・・何度も思うんだが、美鶴、お前の弟、ハイスペックすぎないか?
もはや違う次元の人間に見えてくるんだが。
まあだが、人間嫌い、というのが致命的な欠陥なのだろう。
どれほどスペックが高くとも、人間嫌いという要素がひとつあるだけでその才能の活用法が著しく限られてくる。
「律が今、こうして外に出て人のいる場所に身を投げ出しているのは、私のため。分かってると思うけど、生徒会に入るのなんて、律にとっては狂気の沙汰よ。今までみたいに避けるわけにはいかないもの。関わるってことをしなくちゃいけない。」
その、狂気の沙汰なことを実行するにいたったのは、美鶴のため、か。
つくづく、律は美鶴のことを大切にしているのだなと思う。
普通の兄妹なら、ここまではしない。
両親がいないことにも、関係しているのだろうな。
「律はきっと、これからも人と関わろうとすると思う。・・・私の、ために。だから、このことをみんなに話そうと思ったの。」
「・・・?」
怪訝そうな顔の俺たちに美鶴は二コリと微笑んだ。
陰りのない、いつも通りの美鶴だ。
「みんなには、律の避難場所に、なってほしい。」
サラリと、軽く。
飲み物買ってきて、とでも言うような口調で、とんでもなく難しいことを美鶴は言った。
・・・本気?

