ゴクリ、と。
誰かが喉をならす音がきこえた。
「その子は律を見た瞬間目の色を変えて。えっと、媚びを売るって言うのかな。ボディータッチ、しようとして。律、避けようとしてたんだけど。私のこと見て、一瞬動きを止めたの。多分、私の友達だから邪険にしちゃマズいとでも思ったんだと思う。でもそのせいで、彼女の手が、律の首元―――素肌に、触れて。」
今にも泣きそうな美鶴。
きっと、そのときのことを思い出しているんだろう。
俺たちは皆、固唾をのんで次の言葉を待っている。
悔しいことに、ここまで聞いても全く予想がつかない。
女嫌いとか、そういうことか?
いやでも、俺たち男だし、関係ない、よな?
「律は、とたんに真っ青になって、振り払った。そこで初めて、帰れ、って言って。慌てて彼女を家から出して、律のところに戻ったら、戻った、ら。」
クシャリと顔を歪めた彼女。
そこで初めて顔を上げて、俺たちと視線を合わせた。
「律は震えながら、嘔吐いてた。」
押し殺した声で、そう告げた。
「なん、で。」
自分の声が、自分の声じゃないみたいだ。
自分では、並大抵のことには動じない自信がある。
けど、こういう人の闇、みたいな、そういうことを聞くのは初めてで。
らしくもなく、動揺していた。
「律、極度の人間嫌いなんだって。」
泣きそうに、そう告げられた。
「にんげん、ぎらい?」
永遠が不思議そうに首をかしげる。
意味は分かる。
分かるけど、分からない。
にんげんぎらい。
17年近く生きてきて、聞いたことはあるし意味も知っているが、実生活においては聞いたこともない。
それを抱える人に会ったこともない。
あまりにも縁のない言葉で。
あまりにも、重すぎる言葉、で。
俺たちの思考を奪うには、十分だった。

