有栖川 柊羽side
「手袋って、あの黒いヤツだろ?」
何かを思い出すように流星が言う。
それは俺も気になっていた。
明らかな校則違反だろう、あれ。
けど、アイツ、律は他にも違反だらけだからな。
理由なんて、考えたことなかった。
「へえ、理由なんてあるの?確か、美鶴チャンに触るときだけは外してるよねえ。」
茜の言葉に記憶を掘り返してみる。
・・・たし、かに。
あまりにも自然すぎる動作だったから違和感を感じなかったけど、律が美鶴の頭を撫でるとき、手をひくときは必ず片手の手袋を外している。
「うん、そのことも関係してる。」
伏目がちの美鶴は何を考えているのだろう。
「私に、初めての友達ができたとき、ちょうど、14歳の時だった。」
みんな、黙って彼女の話を聞く。
「日本人の子でね、今思うと、ちょっと、いろいろ変なところがあった。でも、その
ときの私は、極端に人との関わりが少なくて、全然分かんなくて。」
後悔するように、弱弱しく笑って。
「男付き合いが派手な子だった。最後らへんに聞いたんだけど、私と仲良くしてたのは、私といると男が寄ってくるからだ、って。」
そういうヤツも、いるんだろうな、と容易に想像できた。
美鶴はお世辞ぬきに容姿が整っている。
男が放ってはおかないだろう。
それを利用しようとする女も当然いるはずだ。
「私、気付かなくて。家に、呼んじゃったの。それでしばらく話してて、そしたら、律が帰ってきて。」
たどたどしく語っていく美鶴。
自分を責めているようにも見えた。
「後にも先にも、あんな律、見たことなかった。」
ふっと。
綺麗な赤の瞳に暗い光が落ちた。

