翼のない鳥




目を閉じれば、あの時のことは今なお鮮明に。






『ッ、触るな!』






「律はね、すごく繊細な子なの。」



***







手を振り払われた彼女は茫然としていた。
私も、何が起こったのか、分からなくて。



『、帰れ。』



蒼白な顔。

今まで見たことがなかった、彼の表情。

耐えられないと、そう物語っていて。



***



「律はきっと、常に大きなストレスを抱えてて。でも、それを私に悟らせないようにふるまってる。優しすぎるんだよ。みんなにとっては、律はきついイメージがあるかも。でも、ほんとはそんなことないんだよ。身内の欲目かもしれないけど、ほんとに優しくて、人の気持ちを一番に考えるような、優しい人。・・・優しすぎる、人。」



***




私は慌てて、彼女を説得して家から出て行ってもらった。
彼女を玄関先まで送って、帰ってきたら。

帰って、きたら。



***



「優しすぎて、自分がどんなに苦しんでても、簡単にそれを取り繕ってしまう。・・・だから、私もずっと気付かなかった。気づいて、あげられなかった。」









『っ、う。』

『り、つ・・・?』



うずくまって、どこからとりだしたのか、震える手がビニール袋を掴んでいて。


『う、あ・・・』









「律が辛い思いをしてる原因は、全部私だから。だから、話すことで少しでも律の負
荷を軽くできるのなら、私はみんなに、話しておきたい。






あの日、慌てて戻ってきた私が見たのは、震えて嘔吐く、律。


律。

あなたは誰よりも繊細で、優しい人だから。



大切な、唯一無二の片割れだから。




『、ごめ、美鶴。僕は、だいじょぶ、だから。さっきの人、謝っておいて。美鶴も、ごめ。』


自分が一番つらいくせに、真っ先に私のことを思いやった律。



ねえ、私には、何ができるのかな。




あなたにもらったものが大きすぎて。




どうすれば返せるのか、分かんないよ。





『ごめん、ごめんね、律・・・!』






「ねえ、律って、いつも手袋してるでしょう?」


勝手に話してごめんね、と心の中で呟いて。




「なんでか、分かる?」




私の半身のことを、話し始めた。