切り替え早いな。
ずっとそこで驚いてりゃよかったのに。
「どうしてその鍵を持っている?」
どうしてって、それは、“あの人”がくれたから・・・
「そこの鍵って、ずっと前に盗まれて紛失していたはずなんだが。」
・・・盗んだのか、あの人!
いや、まさかとは思ってたけどさ。
まさか、ほんとに盗んでたとは。
「・・・」
一瞬フリーズして、それから何事もなかったかのように鍵を開ける。
そのままドアを開けて、そして。
「おい。」
ガシイッと。
閉まる直前に手を入れられた。
「聞かなかったことにするな。その鍵は盗難物だ。返せ。」
「断る。」
一刀両断、バッサリと。
相手の眉間に皺がよる。
…よく見たらこいつ、なかなか整った顔立ちをしている。
不機嫌そうでも綺麗っていうのがまた腹立たしい。
「盗難物だとか、僕は何も知らされていない。前の所有者が僕にこれを譲った以上、すでに所有権は僕にある。」
ってかずっと前って、あの人が学生だったころだろうから二十年くらい昔だろ?
とっくに時効切れだっつーの。
二度と会わないことを祈りながら、バタリと戸を閉めた。
・・・その祈りは結局、無駄なものとなるのだけれど。