平山コウスケ 越線
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“頭の中が真っ白になる”
テレビや小説で出てくる“よくある表現”のはずだった。
クミコが破水してしまった時も、
緊急帝王切開手術も、
産まれてきた命と対面した時も、
突然訪れた別れも、
決して真っ白になる事なんかなくて、“驚”“哀”“喜”“哀”の感情がちゃんと支配した。
壊れていくクミコにも、
投げられた救急箱にも、
診断されたうつ病にも、
決して真っ白になる事なんかなくて、“戸惑い”“不安”“無力”の自責の念がちゃんと支配した。
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」
だけど・・・
時間が止まってしまったと錯覚するほどの5秒間の沈黙。
一度は振りほどいたその手を取った瞬間、本当に視界が白く覆われたみたいに、
全てが真っ白になった。
無くなった安らぎ、
家に帰ると始まる第二の仕事、
遣いを要された気、
選ばなければいけなくなった言葉、
・・・一変した生活。
暗闇に叩き落とされたこの身と感情へ差し伸べられた・・その手を取った瞬間・・・



