新 不倫



「ご、ごめんなさい・・。
偉そうに・・。」


「・・・ううん・・。
ありがとうね・・。」


「え・・・・。」


平山さんが・・頬杖をつくフリをして・・
鼻を覆って抑えるフリをして・・

伸ばした指先で・・目尻を拭いだ・・。



「・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・え!?・・岸本さん・・!?」





“好きになってはいけない”
“この人は既婚者だから”


“先輩と後輩”
“仕事の同僚”



・・・“娘”と・・“父親”・・・・


・・・“生徒”と・・“教師”・・・



不意討ちに見せられた“涙”が・・

ずっと律し続け、ずっと押し殺し続けていたこの心の境界線を・・

理性を崩壊させてしまった・・・。





「私・・平山さんの事・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・ダメだよ・・
・・・岸本さん・・・・・。」


「・・・・・・・・・。」



その涙にもらい泣きしたからなのか・・

思わず拭おうと伸ばした手を、
解かれてしまったからなのか・・


段々と・・平山さんの顔が滲んでいった・・。



「・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・。」


時間が止まってしまったと錯覚するほどの5秒間の沈黙。


それでも・・・
解かれた手が再び繋がれて・・

一気に引き寄せられて、
私の涙腺は完全に崩壊した。


「「・・・・・・・・・・。」」



誰もいない、デスクトップから発せられる音しか聞こえない真夜中のフロア。


人生初の触覚と、口の中いっぱいに広がるブラックコーヒーの香りを感じながら・・

その背に回した両腕の力は、
涙と共に強くなっていった。