足の痛みと格闘しながら人混みを抜ける
やっとのことでお祭り会場の入り口付近までたどり着く
人がだいぶ少ない
…7時からだったよね花火って
…あとちょっとだ
スマホの時計を見る
6時42分
花火見て帰ろっかな
せっかくだし
でもまあ浴衣の女の子が1人で花火見てるなんて悲しいシチュエーションは見られたくない
人のいないところを探そう
足の痛みに耐えながら人がいなくなっていく道を進む
…ん?あれって
かなり歩いた道の先、鳥居のような赤い柱を発見!
神社でも近くにあるのかな
行ってみよ!
赤い柱は確かに鳥居だった
小さいけれど立派な神社だ
神社の前の石の階段に腰をかける
ここからなら花火も見えそうだなー!
穴場スポット!?
やだー!そんなとこ独り占めできるの?
運がいいなぁ!
…運、か。
そうだね、確かに運はいい
偶然、多岐くんのゲーム相手に選ばれたんだから
偶然、好きな人の仮の彼女になれたんだから
偶然…
花火大会に一緒に来れたんだから
…多岐くん、今頃何してるんだろ
友達と合流したし、ナンパでもしてたりして
…本当は、多岐くんと花火見たかったなぁ
浴衣…可愛いって言って欲しかったなぁ
手とか…繋いだり
それは高望みしすぎかな
はぁ
スマホの光が自分の顔を照らす
『6時、隣町の駅前の時計下』
多岐くんからの簡潔な無愛想なメッセージを眺める
『了解です!楽しみにしてます!』
私の悩んで悩んで悩んだ末に返したものすごく普通のメッセージ
そのメッセージの隣に既読って書いてある
多岐くんがこれを見た
多岐くんと繋がっていた
そう考えるだけで胸が熱くなる
重傷だ
恋に落ちていくばかりだ
多岐くん…
離れたばかりなのに…もう会いたい


