私に恋する可能性




ざわめき、現れては消えを繰り返す人の群れ


……ここにいたって仕方ない



多岐くん達と鉢合わせる前に帰ろ


まだ痛む足に体重をかけ、踏み出す


ガクッ





思ったより足に力が入らず前のめりになる


やばっ!倒れるっ


しかし


ドンッ





前方、何かに支えられるようにして倒れかけていた身体が止まった


「わー…びっくりした」





聞きなれない声

目を開けると私の体を支えている誰かの腕


あ、てか!

私この人に全体重かけてる!


慌てて目の前の人物から体を離す



「あの!ごめんなさい!わざとじゃないんです!」


「いや、べつにいい…けど」


前方の人物を見上げる


……?


あれ?この人、どっかで見たことある気がする


真っ黒で少しだけクセのついた髪と綺麗な白い肌


その人は目をまん丸にして私のことを凝視している


「あ、あの?」

「…」





え、な、何?なんかついてる?


「あのー?」

「…」




え、人間だよね?人形とかじゃないよね?


「あの!」

「っ!え、あ、何?」


いや何じゃなくて


「どうかしました?」

「あ…いや、なんでもない」




なんだったんだ…

まあいいか


「あの、助けていただきありがとうございました」

「あ…うん」

「では!」

軽く会釈して再び、今度はしっかり足に力を入れて踏み出す

しかあし


パシッ


「待って!」


!?


「ええ?」


黒髪に白肌の男の子が私の腕を掴んだ


「あ、えっと…」





「あ…いや、ごめん。なんでもない」


ええー…


男の子の手がスッと離れる


今度こそ軽く会釈をして足を進める


もう止められることはなかったけど



…なんだったんだ?