私に恋する可能性




「あーじゃあ多岐くんみんなで回ってきなよ!」


なるべく元気に、いつも通り言った


「…え?」


「せっかく友達と合流できたんだし!誘ってくれてるし!」


大丈夫だ

いつも通りできてる


「なんかめちゃめちゃ振り回しちゃってた!ごめんね!私は下駄で足が痛くなってきたからそろそろ帰るよ!」


「えーまじー?いいの?」

「足痛いなら仕方ないかぁ」

「一緒でよかったのに」





「じゃあね!会えてよかった!また学校で!」


笑え、私


くるっと身を返し、慣れない下駄で駆け足をする


最後多岐くんがどんな表情をしていたかは見えなかった

いや、見ないようにした

もうなんでも良いか



とりあえず離れなきゃ

何処かへ行かなきゃ

人混みをかき分けるようにして進む


ひぇー足が痛い

どうやら慣れない下駄で靴ずれが始まったみたい

足が結構ボロボロだ

その状態での下駄ランニングはキツすぎる


人混みを少しだけ抜けて足を休める


振り向くと行き交う人たちで道が見えない


…多岐くん達とは離れられたみたいだ