私に恋する可能性




あ!

そんなことよりこの2人きりのチャンス逃すわけにはいかない!


「た、多岐くんのお誕生日はいつですか!」

唐突に話が切り替わった気がしたけどまあいいや

「え、誕生日?急すぎない?」


あ、ですよね

私もちょっと無理があるかなって思いましたけど多分2人きりで話せることは滅多にないので

詰め込みます!


ごめんなさい犬飼先生!

ちょっとゆっくり歩きます!


「なんでまたそんなこと?」

「多岐くんのことを何も知らないのでまずは知ることから始めようかと」

「…それで誕生日?」


はい!


「ふーん…間部さん本気なの?」


え?


「俺を落とすこと」

「本気ですよ」


しっかりと多岐くんの目を見た

大本気だ


「そっかー。今更だけどやめたほうがいいかもよ?」


へ?


多岐くんが声のトーンを一切変えずカラッとそう言った

思わぬ返答に足を止めて多岐くんをみる


「俺を落とすなんて不可能だし、俺のこと知ったって何もいいことないよ?むしろ後悔するかも
本当の俺なんて君の思い描くような男じゃないからね」


…淡々と、いつもと一切変わらない笑顔の混じった顔でそう言った


「第一君のことはゲームの相手として接触しただけだし、あの時は場の盛り上げで勝負なんて言い出したけど
君が本気なんだったらなんだか申し訳ないから先に言っておこうと思って

俺は絶対君なんかを好きにならないよ」


ぽかんとする私に作ったような笑顔を見せてツカツカと進んでいく

錯覚だとは思うけど多岐くんの周りに壁が見える

ものすーんごく遠いところにいるように見える




やっとのことで思考が追いついてきた

…多岐くんの言っていたことを整理する


本当の多岐くん…が私の思い描くような人じゃない?

それって

完全リピートされる言葉と

固まっている私を置いて進む多岐くんの背中


…ふふ


なめられちゃ困るわよ多岐くん!この私を!

私の考えはさっきと一切変わらない


“この2人きりのチャンスを逃すわけにはいかない”


それだけ!