『来るもの拒まず去るもの追わず』


誰かを好きになる気持ちを知らなかった俺を


ここまで変える



最低だけど


ゲームなんかでごめんって思ってるけど


…あの時、ゲーム相手にひなたの名前が上がって良かった

今は心からそう思ってしまう


そうでなければ俺はお前に恋してなかった…どころか


一生、誰かを愛すことはなかったかもしれない


ーーー




帰り道


ひなたの隣を歩く放課後


彼女との間にできるこの沈黙は不思議と心地のいいもの


こっそりとひなたを盗み見た





ひなたの表情が緩んでいる


「なに笑ってんの」


あ、しまった

この質問したら見てたのバレるかも


「ふふ、幸せを噛み締めているのです」


あ、気付いてない

ひなたが馬鹿で良かった(とても失礼)


…幸せ、ねぇ


「変なの」


そんなのさ、思っても言わないんだよ普通は

思わずひなたを抱き寄せそうになった手をポケットに突っ込む


するといきなりひなたが「あ!」と声を上げた

な、何?


「私結局多岐くんのクラスのカフェ行けなかった!」


はー?


「来たじゃん」


犬飼と


「多岐くんの制服姿もっとちゃんと見ればよかったぁぁ」

なんだよそれ


…ていうか


「なんで犬飼と一緒だったの?」


クラスに来た時、犬飼と一緒だった

絶対偶然じゃないもん


「先生がついてきたんですよ」


「ふーん…」


まあ、そうだよな


…犬飼がもし今高校生だったら



クソイケメンで面倒見良くて、一途


…うわ

勝てる気がしねぇ



「多岐くん?」