「ひなた?」


うぶっ!


悶々と考えながら多岐くんの背中を押していたら

急にその足が止まり思わず背中にぶつかる


「おっとごめん」


「いえ…こちらこそ…なんか申し訳ないです」


お兄ちゃんのダサい動揺ぶり


はぁ…もう勘弁してよ


「お兄さん?」


「あ、うん」


「社会人なんだね」


そうなんです

まだ若いのに営業やってるんだよねあの人


「…」


「多岐くん?」


「…いや初対面でこれはまずかったかなって」


まずいといって、自分の髪の毛とピアスを指差す


あー

確かにお兄ちゃんには衝撃あったかもしれない


「まずいっていうくらいなら…なんでしてんのって話だよね」





「…なんかこういうのつけてチャラチャラしてたほうが生きやすいって思ってたから」


「多岐くん?」


「…初めてつけなきゃよかったって思ったかも」


どうしたの?


「そんなにお兄ちゃんに見られるの嫌だった?」


「いや、そうじゃないんだよ。ただなんか、今みたいな生き方してなかったら…もっとちゃんと…」





「ごめん…俺何言ってんだろうね」


「多岐くん…?」


「帰ろう」


少し目を細めて笑った


…なんでそんな笑い方をするんだろう



多岐くんが何を思ってあんなこと言ったのか


わからなかった