私に恋する可能性




「…なに?」


答えたのは多岐くんじゃなくて、近くにいた女の子


声のトーンがちょーっと低くなっている気がする


「誰〜?」


誰かってか?


「多岐くんの彼女です」


自信を持って言ったつもりだけどいつもより声が小さくなった気がした


私の言葉を聞いてちょっとしんとした


そのあと、ドッと笑いが溢れる


「彼女?遥の?」

「えーそれは草」

「ちょっと遥何したのー?笑」


え、何々


なんで笑ってんの?


ぽかんとする私の前で笑う女の子たちと


「フハハ」


!!


多岐くんまで!


多岐くんまで一緒になって笑ってるよ!


なんでよ!何も間違ったこと言ってないでしょ!


「で、彼女サンは何のよう?」


多岐くんの目の前にいた女の子が作ったような笑いを向けて言った


…えっとなんだっけ


あ!


連絡先だ


うー


この状況で言うのか


下駄箱だから次第に登校してくる生徒たちが何事かと私たちを横目に見ていく





躊躇する必要はないんだってば


だって私は多岐くんの彼女…なん、だから



「連絡先を交換しようと思いまして!」


噛まないようにはっきり喋った


すると再び笑いに包まれる


だからなんで!?


「連絡先とか草」

さっきから草生やしてる人がいるし

「遥のことなんも知らないじゃん笑」





「彼女サーン、遥はねぇ女の子と連絡先を交換しないって有名なのよ?」


えっそうなの!?


「今まで彼女になった子たちも連絡先の交換なんて誰もしてないよ?」


ええ、なにそれ


めっちゃ不便じゃん


携帯電話の意味とは



「だから連絡先交換するのは諦めてね」


……