「最低でもこれくらいはやれよ」


やっとのことで離れた多岐くん

いたずらに小さく微笑み、べっと舌を出した


「た、多岐くんっ!!」


こ、このプレイボーイっっ!


真っ赤になって怒る


「ふふ、帰ろ」


こんちくしょう!

結局私ばっかりドキドキしてる!!

襲われたのは私の方じゃんか!!



席を立ち、私が隣に来るのを待っている多岐くん


…その後ろ姿を見れば

また心臓がやかましくなる


ああ好きだなぁ



「ひなたー?」


「うん…今行く」



隣を並んで歩く


当然のように私に合わせてくれるスピード


心地の良い沈黙


思わず笑みが溢れる



「なに笑ってんの」


「ふふ、幸せを噛み締めているのです」


「変なの」


私が変なのなんてずっと前から知ってるでしょ

多岐くんはポケットに手を入れてふっと笑った


なんて素敵な文化祭…文化祭?


あ!


「私結局多岐くんのクラスのカフェ行けなかった!」


「はー?来たじゃん」


いや行ったけども


「多岐くんの制服姿もっとちゃんと見ればよかったぁぁ」


あんなレアな多岐くんなかなか見れないのに


「なんだよそれ」


あーあ残念ザマス



「…ていうかなんで犬飼と一緒だったの?」


犬飼先生?


「最初に俺のクラス来たとき」


そういえば一緒に行った気がする


「先生がついてきたんですよ」


意味なんてないでしょ


「ふーん…」


何やら言いたげな多岐くんの横顔


「多岐くん?」