「多岐、くん?」


胸の中で俺を見上げようとする間部ひなたの動きを抑制する


ぎゅっと力を入れて抱きしめる


背中に回した両手で間部ひなたの体を包み込む


だいぶ、冷えてる

10月とはいえ、夜はかなり冷える


どれくらいの間ここにいたんだよ

どれだけの間、ここで怯えてたんだよ


俺が来なかったらどうするつもりだったんだ


昨日今日と恐怖に歪める間部ひなたを見るなんてのは…



「ごめん、本当にごめん」


「多岐くん?どうしたの?」


「…俺は彼氏だろ?」


「え」


「赤の他人じゃないでしょ。だから頼って…ちゃんと頼って。俺の連絡先だって知ってるでしょ?」


渡しただろ?

あれ結構照れ臭かったんだからな


「で、でも…多岐くんは一緒に帰らないって」


「取り消す、忘れろあんなのなかったことにしろ」


「え、ええ…」


「帰ろ…家まで送るから」


間部ひなたの肩に自分の顔を埋める


少し甘い…いい香りが鼻を通る


腕の中でコクっとうなずいた



「…多岐くん…ありがとう」


顔は見えなかったけど


安心しきったように俺の服を掴む間部ひなたに胸がキュッと締められる感覚


「うん」


自分の顔を見せないように間部ひなたの手を掴んで引く



確かに…俺はこいつに振り回されるようになって


人間らしくなったかもしれない



思い通りにならない自分の体に変な違和感と、妙な心地よさを覚えた