…変なの
俺この先生とまともに喋ったことないんだけど
昼休み、何故か呼ばれて中庭のベンチに並んで座る
「間部のことだけど」
え、嘘だろ
その話題なの?
「今日すげぇ寝不足で死んだ顔してたんだよ」
それ多分…俺のせいだな
「何かって聞けば柄にもなくネガティブになったんだってよ」
ネガティブ…?
なんで?
「あいつは常に全力で何も考えずに突っ走ってるイメージだけど実は結構小心者らしいな」
あいつが?
所構わず俺を見つけると突っ走ってくるのに?
「でもまあ覚悟だけは一丁前で、度胸もある。弱いところなんて滅多に見せない強いやつだ」
…
そんなこと
「知ってます」
あんたに言われなくたって分かってる
俺だって間部ひなたのことは知ってるんだから
少し不機嫌に答えると何故か犬飼は少し笑った
「本当に不器用なガキだな」
は?
「まぁ俺が言いたいのは、ゲームだのなんだの知らねぇけど適当に付き合ってんだったら今すぐやめろってことだ」
オーラの変わった犬飼の鋭い目が俺を捕らえる
やめろって言われても
「間部は良くも悪くも素直なんだよ。何事も真っ当に受け取っちまう。生半可な気持ちであいつと付き合うのはやめろ」
そんなの…
「俺だって最初はこんな付き合いするつもりじゃなかったっすよ。あいつが俺を落とすとか言うから」
だから…俺は付き合ってやってるだけ
…の、はずなんだ
口籠る俺を見て犬飼はため息をついた
スッと立ち上がって俺を見下ろす
「お前に間部はもったいない。俺が高校生だったらとっくに奪ってる」
…は?
「…まあそういうことだ。俺が教師でよかったな」
は?
犬飼は中庭に俺を置いて去っていく
その後ろ姿を微妙な気分で眺める
…
そういうことって…
そういうことだよな


