その日の授業には全く集中できなかった
まあいつも集中してないけど
「遥ぁ」
昼休み、机の上でだらけていると女の香水の匂いが近づいてきた
「んー?」
「なーんか遥最近付き合い悪くない?」
「そー?」
「私達の誘い受けないじゃん、ていうかまだ付き合ってるってマジ?」
あー
「まあ」
「もういい加減遥からフっちゃいなよ」
「…俺は女の子フラないのー」
…そう、それだけの理由
間部ひなたと関係が続いているのはそれだけ
俺が自分から女子をフラないから
あいつが諦めない限り、この関係が続く
…
間部ひなたはゲームの相手
…そのはずなのに
俺の心臓は最近誤作動しかしない
「ね、遥ぁ私と付き合お?」
…
「やめとく」
「なんでよー」
今は手一杯だから
ブーブー文句を言ってくる名前がはっきりわからないこの女を見る
…
心臓は至って正常
やっぱりあいつにだけだ
「あ、犬飼センセーじゃーん」
「今日もかっこいいね先生」
不意に女のそんな声が上がった
犬飼?
なんでここに?
「うるせぇ、多岐いるか?」
…俺?


