私に恋する可能性




逃げるように保健室に駆け込んだ



「はぁお前多岐となんかあっただろ」


ため息をつきながら保健室のソファに座った先生


「わかりやすすぎねぇかお前ら」


うっ


「多岐があそこまで乱れるなんて珍しい。何があったんだよ」





黙りこくる私を見て少し息をつき、すでにボサボサの頭をさらにグリグリと撫でた


犬飼先生の手は大きくて暖かい



「…犬飼先生の手って落ち着きますね」


「そうか」




「ちょっと…柄にもなくネガティブになっただけです」


「本当柄にもないな」


むぅ


「お前が多岐に惚れてるのは知ってるけどあんまり辛いようだったら無理すんなよ」


「…そうですね…自分で制御できたらいいんですけど」



この想いも

全部



「制御できねぇのはお前だけじゃねぇと思うぞ」





「多岐も一丁前に構えてはいるけど俺からしたらただのガキだからな。お前も多岐もまだまだ世間知らずの未熟者だ」


未熟者かぁ


「まあ要するに、間部も多岐もおんなじってこと」


おんなじ…


「そう抱え込みすぎんな。所詮高校生の若い心だ。深く考えずにお前の思う素直な気持ちを言ってりゃいいんだよ」


なるほど


「それでも今回みたいに悩んで体調崩すようなことがあるんだったらやめちまえ」


えー…


「案外お前のことを好いてる男は他にいるかもしれないぞ」


嘘だぁ

この年齢まで一度も恋愛経験のなかった私だよ


あーいうタイプだよ

めちゃめちゃ話しやすい女友達止まりみたいな



「…ま、俺が高校生だったらよかったのにな」


「はい?」


「…いや、なんでもない。とりあえず顔ひどいから一限目は寝ろ。保健室の先生には言っとくから」


顔ひどいって言ったよね今


「わかりました」


「ん」


犬飼先生の後ろ姿





「先生」


「ん?」


「ありがとうございました」


「…休めよ」


はーい