私に恋する可能性




「多岐ー?おいなんだよなんか今日静かじゃね?」

「てかもうすぐHRだって!急げよ」

「あー…うん」


多岐くんのいつもよりワントーン低い声


「おいまじでどうした!」

「大丈夫か多岐!」

「あ、犬飼センコーじゃん」


ぎくっ!


騒いでいた男子集団の1人が不自然にたたずむ犬飼先生に気づく


「おう…」


「どうしたんすかー?そんなとこで」

「センセー多岐がおかしいー」


「…多岐も?」


犬飼先生がボソリと呟いた


思わず先生の服を引っ張る



「…っ、おい、お前らさっさと教室いけ」


「うぇーはーい」

「多岐ー行くぞー」



「行くぞ」

犬飼先生は小さな声でそう言い

固まっていた私の腕をぐんっとすごい力で引っ張る

多岐くんたちとすれ違う瞬間に場所を変えて
私を巧みに隠してくれた



「…?」


だけどすれ違った瞬間、1人だけ足を止めた


「犬飼先生…?」


っ!


多岐くんだった



「あの」


「すまん多岐、また今度にしてくれ」



何か言いかけた多岐くんを遮り、私の背中を押した


見えてないのかなこれ