私に恋する可能性




「…帰るか」


不意に多岐くんがそう呟きスッと立ち上がった


顔を横に向けてしまって表情がわからない


「う、うん」



でもこの一瞬のような時間がまた私の宝物になるんだ


ごめんねみっちゃん


これも私の秘密にする


さっきまですくんでいた足はすっかり元に戻っていた


私がのろのろと立ち上がるのを多岐くんは待っていてくれた





あれ、でも


これって



『だから帰りは一緒に帰らないよ。ずっとね』


リピートされる言葉


待っててくれてる多岐くんを見上げる


「ん?」


あ、いや


駆け足で多岐くんに近づいた


もう人がいなくなった廊下を並んで歩く





不思議だな


学校で、一緒に歩くなんてさ



「多岐くんのクラスは文化祭何やるんですか?」


「まだ決まってないよ」


あそっか

私も決まってないや

はやとちってしまった


「私文化祭の実行委員代表になっちゃったんですよ」


「え、そうなの?」


「的場くんのせいですよ」


「的場?」


あと犬飼先生


「多岐くんのクラスの実行委員は蓮斗く

「茂木ね」


またしても遮られてしまった


「も、茂木くんなんですね」


「あーあいつ寝てたから強制的に指名されてた」


あーなるほど

意外だと思った


私たちの話し声だけが響く校舎


普通の…彼氏彼女みたいだ