「うお」
多岐くんが掴んでいた腕がするりと抜け、ペタンと地面に座り込む
…怖かった
心臓の音がはっきり聞こえるくらいバックバク言ってる
なにが怖いって…蓮斗くんの腕を振り払えなかったこと
あんまり男の人と関わってこなかった今までの人生
あんな接近されることもなかったし…もしあのとき多岐くんが来てくれなかったらって考えると
ブルっと体が震えた
赤くなっている手首を自分で掴む
…怖い
「…大丈夫?」
…
多岐くんが少し気まずように私を見た
「…うん、ありがとう…来てくれて」
本当にありがとう
「…何があったの?」
私の横にしゃがみ込んで顔を覗き込んでくる多岐くん
…
「…いや…その」
多岐くんに言っていいのかな
嫌われてるなんて知ったら傷つくかな
…また茂木くんと喧嘩になっても嫌だし
えっと
「間部さん」
!
何か良い言い訳を探そうと目を泳がせていたら
ぐいと、顎を掴まれて多岐くんの方を向かされる
強制的に交わる視線
「ちゃんと言って。本当のこと」
…
なんか…嘘ついても見破られそうだな
私はやっぱり多岐くんには敵わないのかもしれない


