私に恋する可能性




いつの間にこんなに近くにいたのか


目の前にいた蓮斗くんに両腕を掴まれる


誰もいない数学教室に響く椅子と机の音


今かなりすごい体制だけど…え、なんで?



「俺の手振り払える?」





「無理でしょ?」


…っ

どんなに力を入れてもびくともしない


……っ


「そんなんで俺から多岐を守るなんて無理だねー」




なんなんだこの人

さっきから何がしたいんだ


「俺結構ガチだよ?今までは無視してきたけどひなたっていう存在も知ったことだし、そろそろ多岐に本格的に手出ししても良いかなーって思ってたんだよね」




なっ

多岐くんを傷つけるのはダメ!


「だけどさ…もしひなたが俺のお願い聞いてくれるんだったら、多岐には絶対近づかないって約束してあげるよ?」





すごい至近距離で私の手を強い力で掴んだまま、ニヤリと笑った

手首がジンジンする

鼓動が早くなっていく


「俺と付き合って?」




はい?


「ひなたが俺の彼女になって?そしたら多岐には手を出さない」


…は、え?


付き合うって、え?


だって私のことめんどくさいって


「興味はあるんだよね、多岐をも動揺させるひなたに。だからひなたが多岐の身代わりになって俺と付き合ってくれるなら…」


多岐くんと別れるってこと?


そんなの嫌だ


でも、多岐くんが殴られたりするのも…嫌だ


「ねーひなたどうする?」


……え、なにその少年漫画のラスボス戦終盤で助かるのは自分かヒロインかみたいな選択肢(表現独特)



そんなの…


え…まって


どうしようわからない


「ひなた」


混乱する私との距離はほぼゼロに近い蓮斗くん


綺麗な顔をいたずらにニヤけさせて近づく



ど、どうするべきなの…

バクバクと嫌な音を立てる心臓


…怖い