ーー



花粉は持ってないけどなんとなく花の香りが少し鼻をくすぐる気がするいい天気の日


降りる駅は合ってるはず…


この前お兄ちゃんと来た時、この景色見た気がするもん


大丈夫さ!


えっと、確か学校はこっち…


まあ焦らなくても時間に余裕は…


あんまりないね


腕時計を見たまま口角が下がる


急ごう!


多分合ってる!



……



あれ


あの家…さっきも見た気がする


いや、気のせいだ!




いや、やっぱり見たよねあの家


戻ってきちゃった?


おんなじ道ぐるぐるしてる感じ?



『これ…もしかしなくてもやばいやつかな?』



見慣れない道の真ん中で足を止める



『いや!大丈夫!いつかは着く!それが道だ!』


人のいるいないを気にせずそう呟き、ズンっと足を前に出した


その時サアッと春の風が吹き、私の人より茶色い肩までの髪がブワッと暴れた


『プハッ』





風の音に紛れて誰かの吹き出すような笑い声が聞こえて振り向いた


そのとき見た光景はしっかり覚えている


春の風に明るい金髪がなびいていた

少し舞っていたピンクの桜の花びらの間で

くしゃっとした笑みを私に向けていた男の子


『なにその無理やり過ぎるポジティブな考え方』


時間が止まったかと思った

心を奪われた

その笑顔があんまりにも素敵で

ぽかんとした私を見てさらに笑ったその人は私に手招きした


『迷ったんでしょ?制服同じっぽいし連れてってやるよ学校。おバカさん』


お、おば…

おばかさん!?


悪戯に笑って私の5歩くらい先を歩く金髪の男の子


今おバカさんって言ったよね…


でもそんなことどうでも良くなるくらいに
胸が、頭がいっぱいで


背の高い後ろ姿を見つめながらひたすらに追いかけた