けれど俺は気に入っていた。コンクリート打ちっぱなしになっているのもかっこいいし、とにかく室内がお洒落であるから一般的には浮いてしまうような珍しい家具もマッチする。

一点ものの変わった家具が好きな俺にとって、唯一無二の部屋造りが出来る。

螺旋階段もかっこいいし、解放的な空間である。何よりも防音が整っているこのマンションはピアノを弾く俺にとっての、お気に入りポイントなのだ。



菫はこの家に来た事はない。 というか、18から一人暮らしを始めてから何度か引っ越しを繰り返したけれど、一度たりとも家には来た事がない。

中学から分かれても高校まではお隣さんだから、それなりの交流はあった。 けれど家を出てから徐々に疎遠になっていった。その間俺は海外にも留学しているし、その間菫がどう過ごしてきたのかは知らない。

連絡先は知っていたからたまに連絡を取る事はあったけれど、家に遊びに来た事は一度もない。




L字型に曲がった様々な色が混じり合ったカラフルなソファーに腰をおろす。

…菫とこの家はどこか似つかわしくない。あいつは一人暮らしするにしても利便性の良いマンションを選ぶだろうし、家具もシックな物で統一するだろう。

俺と菫では生き方だけではなく、考え方や好む物さえ正反対なのだ。

だからこそ、菫は俺と一緒にいれば新しい自分を見つける事が出来るかもしれない。新しい世界を見て、その凝り固まった考えだって変わるかもしれないだろう?

だからこそ君が夢を見るのであれば、俺と共に。



そこに邪な感情はひとつも存在しない。それだけは信じて欲しい。

君だけには他の女性へぶつけるような欲望を向けない。

大人になっていくにつれて幼き頃のような純真な気持ちは少しずつ失われていく。

けれど、菫だけは俺の中で汚してはいけない。どこまでも真っ白な世界にあるような存在だったのだ――。