5.潤□新しい日常□




やけに早朝からガサゴソと動く音が聞こえると思った。

まぁこのマンションは防音であるから、いくらでも大きな音を出せばいいと思うけれど

ベッドサイドの携帯を見たら、時刻はまだ7時少し前。 基本的に8時頃起きて出勤の準備を始める俺にしては、早く目覚めた朝。

晴天だった昨日とは打って変わり、カーテンを開けると太陽は顔を見せない。代わりに灰色の雨雲が空に浮かび上がっていた。

「ふぁ~…おはよ~」

「ふんふんふんふん はぁはぁはぁ 潤、 おはよう。 ふんふんふん」

大きな鼻音を立てながら、菫はリビングの床の上で筋トレをしていた。 全く色気のない……。

プランク?という奴だろうか。大きく呼吸をしながら肘とつま先だけつけ床に突っ伏す。 なんつー真面目な女だ。たとえ人の家に来たとして今までのルーティーンを変える気はないらしい。

「ふぅ、疲れた」

「朝から頑張るな……」

「毎日している事を怠ると調子が悪いのよ。
それより朝ごはん作っておいたから、食べなさい。
お弁当もあるわ」

「えぇ?!」

食べなさい。とやけに命令口調だが、まさか朝ごはんを作ってくれるとは…。しかもお弁当まで。

しかしそれは菫にとって何ら特別な物ではなく、毎日のルーティーンのひとつに過ぎないのであった。健康志向の彼女らしい。


筋トレを終えた菫がお米を茶碗につぎ、スムージーも飲む?と訊いてきた。

スムージーなんて普段は飲まないが、貰う事にした。

しかし朝からこのご飯は少し感動ものだ。