「……くんの……せいだよ……」 込み上げてきた黒い気持ちは、醜い言葉になって、あたしの口からこぼれ出した。 「……郁己くんに会わなければ、指輪を無くすこともなかった」 ……そうだよ。 非常口とか、ベランダから上がり込んでくるとか、 そんな非常識なことをするお隣さんにさえ出会わなければ…… こんなことにはならなかったはずなんだ。 「部屋にも、心の中にも、ずかずか入り込んできて……。 だいたいさ、女ったらしの郁己くんに、説教なんてされたくないよ」